
【 秋分(しゅうぶん)】
2021年9月23日
太陽が真東から出て真西に入る。
春分と同じように、昼と夜の長さがほぼ等しくなります。
“秋の日は釣瓶(つるべ)落とし”といわれるように
今、綺麗な夕焼けが見えたと思ったら、
井戸の釣瓶のようにあっという間に陽が沈み、「秋の夜長」へと向かいます。
「陰陽の中分となれば也」
陰陽・昼夜・暑寒もちょうど中間、
爽やかな秋らしい気候ですが、
“秋雨前線”が活発になり長雨が続いたり、
台風シーズンとも重なりますので、土砂災害など注意が必要です。
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〜七十二候〜(しちじゅうにこう)
春夏秋冬、一年間を二十四分割した二十四節氣を、更に三分割したのが七十二候。
季節それぞれの出来事をそのまま名前にした言の葉、
約五日ごとに移ろう細やかな季節。
①初候9/23〜9/27 雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)
夏にゴロゴロ鳴り響いた雷が収まる頃。
秋の気候へと変わって来ています。
高く澄んだ秋の空には、夏の大きな雷雲の代わりにモコモコした鱗雲が現れます。
②次候9/28〜10/2 蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)
虫たちが早くも冬籠もりの支度を始める頃。
元気に活動していた虫たちは、秋冬の半年間を木の根・枯葉の下・土の中で静かに過ごします。
長期間なだけに準備は入念ですね。
来年の【啓蟄】に姿を現してくれるまでそっと見守りましょう。
虫たちの冬籠もりもさまざま。
カマキリは雪に埋もれない高さに、
コオロギは温度が保たれる土の中に卵を産んで子孫を育み、
モンシロチョウやアゲハチョウの幼虫はさなぎで冬を耐えて、
テントウムシやクワガタは、成虫のまま木の根元や土の下に潜って春を待ちます。
命をつなぐ事に全勢力を注がないと生きられない程、自然は厳しいのですね。
③末候10/3〜10/7 水始涸(みずはじめてかる)
田の水を落として稲穂の刈り入れを始める頃。
黄金色に美しく色づいた稲穂が頭を垂れ秋が深まると、いよいよ収穫の時期です。
昔から米の字にかけて「米作りには八十八の手間がかかる」といわれますが、
丹誠込めた田んぼで風にそよぎ、キラキラ輝く稲穂が実りの秋を伝えてくれます。
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本日(秋分の日)を中心に前後三日間、計七日間が『秋のお彼岸』期間。
春のお彼岸の頃:種まき(無事に春を迎えられたことに感謝、自然を称える)
秋のお彼岸の頃:収穫(無事に収穫出来ることに感謝、ご先祖を敬う)
自然を目安に、自然界の流れに寄り添って生活していたのですね。
自然から離れる程、真の健康からも遠ざかってしまうのかもしれませんね。
お彼岸の中日は、
極楽浄土の真西に太陽が沈み、彼岸と現世(此岸)が最も近づく日。
祖先を敬い、亡くなった方の御霊を偲んでお墓参りに行く習慣があるのですね。
普段はひっそりと静まりかえった墓地も、綺麗なお花とお線香の香りに包まれる時期です。
余談ですが…
この時期見かける「彼岸花」
秋の澄み切った青空に映える真っ赤な花。
学名:リコリス アジアータ
別名:1000種以上あるようです
「死人花」「幽霊花」「地獄花」「痺れ花」
などなどちょっと怖い呼び名が並びますが、
英語ですとレッドスパイダーリリー・レッドマジックリリーだそうです。
一番知られているのは、
サンスクリット語の「曼珠沙華」(マンジュシャゲ)でしょうか。
これは、“天界に咲く花” ”天上の花“などの意味があり
心を柔かくほぐしてくれたり、おめでたい兆しともいわれるようです。
彼岸花の特徴のひとつは
球根からお花がでてきて、そのお花が枯れた後に葉が成長する事です。
まっすぐ伸びた一本の茎の先端にお花が咲いて、
枯れてしまうと葉が出てくる…
つまり花と葉が同時に見ることが出来ないので
「葉見ず花見ず」
とも言われています。
植物の多くは暖かい春に芽を出し、夏に葉が繁って
秋には枯れてしまいますが
彼岸花は逆。
冬に葉を繁らせ、寒い季節に球根に栄養を貯えて
春には枯れて秋に花を咲かせる。
それで昔の人は「彼岸花」をちょっと怖い名称にして恐れていたのかも…
もう一つ怖がられていたのは、
球根だけでなく、花・茎・葉など全てに“毒“があるからでしょうか。
私達が今日、
彼岸花を畦道で見かけるのは、稲や農作物を、
彼岸花を墓地で見かけるのは、土葬で埋葬されたご遺体を、
モグラやネズミなど土中移動の害獣から守るためだそうです。
彼岸花を見かけても決して食べないでくださいね。
謝って口にして吐き気や下痢、
酷いと中枢神経麻痺で死に至ることもあるそうです。
彼岸花はそっと触れるか眺めるだけにしておきましょう。
秋といえば…
“秋刀魚”(さんま)が旬をむかえますね。
文字通り、「秋の銀色に光る刀のような魚」。
さんまという呼び名の由来は
細長い魚の「さまな(狭真魚)」→さんま
大群で泳ぐ大きな群れの「さわ(沢)+ま(魚)」=さわんま→さんま
などなど諸説あるようです。
銀色に刀のように硬く、綺麗に澄んだ目、鮮やかな鮮紅色のエラ、
そして下顎の先端は美しい黄色。
頭から背中にかけて盛り上がって厚みのある秋刀魚は、脂が乗っている証拠だそうです。
消化器官が短い秋刀魚は、お腹に消化物を殆ど溜めないので
はらわたを取らずに塩焼きで全部美味しくいただけるそうです。
ちょっと敬遠しがちな内臓の苦味も秋ならでは…ですね。
新米の炊きたてのご飯や、採りたての栗おこわと一緒にいただきたい秋のご馳走です。
秋の七草(萩・尾花・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗)が揺れる里山の風景…
春の明るい華やかさとは違う、しっとり落ち着いた趣も素敵ですよね。
春の七草は、厄払いや無病息災の願いを込めて、
お疲れの胃を労わり冬に不足しがちな栄養素を補うため「七草粥」をいただきます。
秋の七草は、
野原に咲いた七種の花を愛でて、過ごしやすい季節の到来を喜び、花々を観て楽しみます。
春と違って食べませんが、実は薬草なのです…
クズ「葛根湯(発汗・解熱)」、
キキョウ「桔梗湯(咳止め)」
はご存知でしょうが、
ハギ「婦人病(めまい・のぼせ)」、
ススキ「解熱」、
フジバカマ「痒み」
ナデシコやオミナエシ「消炎・利尿」など
美しく咲き誇るばかりでなく
それぞれの根にはこんな薬効があるのですね。
昼夜にかかわらず澄み切った空を見上げて
旬の食材と共に五感で
食欲の秋・読書の秋・芸術の秋・スポーツの秋それぞれを楽しみましょう。
ミッションメンタリング協会認定マスター
周防千賀子
