東洋では、陰陽論といって、物事には必ず陰と陽があるとしています。
昼と夜
表と裏
縦と横
男と女
空間と時間
精神と肉体(現実)などなど。
西洋にも似た考え方はありますが、東洋の陰陽論は、陰と陽に完全に区別するのではなく、陰の中にも陽があり、陽の中にも陰があるということ、陰が極まれば陽になり、陽が極まれば陰になるということ、が特徴になっています。
さて、経営における陰と陽について考えて見ましょう。
陰は、現実を表します。
すなわち、経済、政治、人間関係などの、時間の経過とともに移ろいゆく、様々な現実の世界です。
つまり企業で言えば、どうやって儲けるか、どうやってマネジメント(管理)するか、どうやって人の問題を解決するか、どうやって評判、実績を上げていくかなどの、現実的な側面は、陰なのです。
陰は、横線(東西)の世界です。
東から日が昇り、西に日が沈むまでの間の時間経過とともに、バタバタと肉体を動かしていく世界です。
一方、陽は、精神を表します。
これは、縦線(南北)の世界です。
経営にとっての精神とはなんでしょう。
こんなふうに、考えてみましょう。
北は、習得本能の方向。
先祖、親、師匠などを表します。
高貴かつ厳かな場所であり、精神を学び、受け継いでいくエネルギーです。
南は、伝達本能の方向。
子孫、子供、弟子などを表します。
庶民的で楽しむ場所であり、夢や情熱を伝えていくエネルギーです。
経営にとって、精神(縦線、南北)とは、本来、その企業の目指すもの、目的、理念であり、また、こんな社会を作りたいという夢、ビジョンであるということですね。
これらの理念やビジョン、社員の幸せなどは、財務諸表などには表れず、目に見えないものです。
そして、短期的な企業の評価の対象にもなりません。
経営者は、ついつい、目に見える現実、横線の世界に没頭します。
ところで、経営という言葉、よく見ると面白いことに氣づきます。
経を営むと書きます。
経ってなんでしょう。
地球儀などを見ると、北極と南極を結ぶように、南北にいくつもの縦の線が書かれています。
これを経線と言います。
ほら、よく、地球上の位置を表すのに、東経○度、北緯○度と言いますよね。
そうです。
経とは南北を結ぶ縦線のことです。(ちなみに、横線のことを緯線と言います)
つまり、経営とは、縦線(精神)を営むということです。
企業が本来、なんのために存在し、どんな価値を与え、どんな社会を作ろうとするのか、この精神を、脈々と営むことが、本来の「経営」という意味なのですね。
現実にまみれて、資金繰りに翻弄されてしまうことは、経営ではないのですね。(しいて言えば、緯営ですね。イエイ!)
さて、
陰が極まれば、陽が生まれる。
情報があふれ、時間が過ぎていく忙しさの中で、現実に行き詰まったら、精神に立ち返る。
このことを思い出していきたいですね。
なんのために、事業をやっているのか、どんな社会を作りたいのか、もう一度、原点に戻って、精神を大切にする。
悠久の知恵に学ぶことは、多いのではないでしょうか?
篠田法正